2015年度 卒業研究


松江 海音

インスタレーション/タブロー

新たなインスピレーションが生まれた時、なんとも言えない快感を得ることができる。そして、新たなインスピレーションは様々な視点から何度も思考をリセットし、見つめ直していくことで生まれることが多いと感じる。また、その変化の過程は「揺れる」という感覚に近い。
私は空間をインスタレーションとタブローの両面から見つめ、インスタレーション空間を構成する4枚のタブローの配置、更にタブローを描き進めることによって変化し、作用し合う空間というものの創出を試みた。場所の見え方を変化させ、実際に存在する物理的な空間とその場所に入って身体的な感覚で捉えた空間とのギャップによって「揺れる」という感覚を表現した。

「 Syncopation Ⅲ - F,L,R,U」
  布、アクリル 180 × 260 (cm)


大川 晃

超集中が生み出す没頭間

私はシャワーを浴びているとき、実際はたったの数分しかたっていないにも関わらず、数倍もの時間どこか他の心地良い空間、さらに過去の記憶に漂着するような「没頭間」(没頭が生み出す時空の狭間)に辿り着くことがある。
その時空をいつでも生み出すことができないかと考えた。あるシンプルな行為、システムから生まれる「超集中」、それが「没頭間」を作り出す。

何か自分が好きなことに没頭する。何にもとらわれることなく過ぎていく心地の良い至福の時間、遠い昔の忘れ物を見つけたような、どこか懐かしい感覚が蘇る。

『記憶へ漂着した雫』
接着剤樹脂、プラスチック板、ライトテーブル、記憶のテキスト
10 × 25 × 35(cm)


知念 叶子

身体感覚の絵画表現

気になる対象に出会ったら、描きとめたいと思う。

約半年間、首里のとある風景の中に通い続けた。
陽ざしは紙と肌を焦がし、雨粒が紙の上に落ちては染みをつくった。
近づいたり遠ざかったりする、生きて動くものの気配。
時間とともに移ろう光。
その場所で感じた体験を、紙の上と身体に刻んだ。

絵巻を離れた後、身体に残った印象や記憶を拠り所にキャンバス上に表現することを試みた。

『 光 』
 油彩、麻布 91 × 65.5(cm)


『 首 里 』
 鉛筆、紙 29.7 × 328(cm)


下地 理

『素材の特性を生かす表現』

素材とは何かの元になる始まりのたね。

それにただただ触れていたい。そこから私の制作は始まった。ただ手で触れていても、気付けば力が加わり、無意識なはずのその行為のうちに生まれた意思が手を伝い素材に届く。素材との対話のうちにいつの間にか形が生まれる。今回はその対話のうちに生まれた形を私が心地良いと思う状態に再構成した。その状態とは「並べる」ということである。無意識のうちに生まれた偶然の形が意識して並べられた様を楽しんでいただけると嬉しい。

対話の跡 Ⅱ
絹 テグス サイズ可変

対話の跡 Ⅰ
絹 テグス サイズ可変


與座 花織

―植物の変容―

植物から紙を作り、紙を材料にし、再構成する。
制作する中で、植物の内側が明らかになっていった。その行為は植物の本質を暴いていくような感覚に近い。それを再構成することにより本質的な姿へと近づいていく。
鑑賞するとき、元の植物を頭に思い浮かべながら見てもらえると幸いだ。

「fiber plant – 月桃− 」
植物繊維( 月桃)、針金  50 × 50 × 3.5(cm)

「テッポウユリ」
テッポウユリ、針金
8.5 × 55 × 28(cm)

「オオイタビ」
オオイタビ、板、石
サイズ可変



秋山 美月

「材質感を引き出す彫刻表現」

素材に触れ、質感を確かめながら制作していくうちに、素材は素材なりのあり方があり、独特な「気」があると考え始めた。深く物質と関わり、感性を鍛えることで、個人の範囲にとどまらない普遍的な価値観が存在すると考えている。素材に向き合うことで自身のこころを知り、他人と通じ合う「接点の始まり」を感じた。

「受け返す流れ」
木材(杉) 165 × 290 × 180(cm)


「受け返す流れのドローイング
木炭、墨汁、アクリル、鉛筆、紙 216 × 480(cm)